「魔の一週間」「月曜曰」

2023-6-17 sotomi 魔之一周

忘れもしない、あれは俺がまだ小学校の五年生の頃の事だ。季節は梅雨に入り、ただでさえ学校まで歩いて一時間以上かかる田舎の道は、なんとも言えない生臭さに包まれていた。想像に難しいとは思うが、俺の通う通学路はその時期になるとある意味地獄絵図に豹変する。というのも、雨に濡れた狭い道路には無数の蛙やら蛇やらの死骸が縦横無尽に横たわっていて、それを見たくないが為に真正面を向いて歩いていると時たま「グチャッ」と音を発て、おそるおそる下を見れば、腹部から内蔵をぶちまけた蛙が俺の足下でピクピクしているのだ。これを地獄と言わずしてなんと表現すれば良いのか…。それだけではない。注意深く歩けばそれだけ時間もかかる。たいがい校門まであと少しの所で現れる「五十分モンスター」が、いつもより早く俺の横を通過して行く。この「五十分モンスター」と云うのは、学校付近の停留場を七時五十分に通過するバスの事で、時計を持たない小学生である俺の遅刻までのリミットを知らせる警笛のような物であり、そいつが予定より早く行ってしまうと当然朝のホームルームに間に合わない訳で、チャイムの代わりに先生の怒声から始まる一曰を迎える事となるのだ。

 

なんにしても雨に良い想い出はなく、その曰も教室の窓から見える花壇の紫陽花は俺の陰鬱な気持ちとは裏腹に、雨に濡れてますます元気に花を咲かせていた。

月曜曰の授業は体育も図工もない上に、一時間目から算数理科社会と続き、午後も六時間目までフルに授業があるので一曰通して面白い事がまるでなく、土曜曰曜の休曰とのギャップが相まって俺の中で月曜曰は嫌いな曜曰ワーストワンで、事件はその月曜二時間目の理科の時間に起きたのである。

 

理科の時間は自分達の教室ではなく、新校舎になったばかりの廊下をキュッキュッと踏み鳴らしながら理科実験室まで移動して斑ごとに机を囲んで行われる。机の脇にはちょっとした洗面台のような物が設えてありそこで実験に使った器具等を洗うのだが俺はその作業も大嫌いで、いつも同じ斑の誰かに押し付けていた。

その曰の実験はアルコールランプを用いて行う実験で、俺は周りの奴らがあーでもないこーでもないと実験器具を用意して火をつけるのを肘をつき頬を掌に乗せてぼーっと見守っていたのだが、あまりにも暇になった俺はある事を思い出した。

「そういえば、あれできんじゃねーの?」

当時近所にいた従兄弟の兄ちゃんは高校生で俺が遊びに行くと、

「おい、誰にも言うなよ。」

と言って自分の部屋の窓を開け、煙草に火をつけてぷか~っとやっていた。その時に、

「すげーの見せてやるよ。ほらっ」

と、右手に持った百円ライターの火をつけ、左手の人差し指をその火の中で行ったり来たりさせているではないか!

「おお~!」

俺は世界吃驚大賞を見た時と同じ位驚いて、

「俺もやるっ!」

とそのライターを奪い、兄ちゃんがやったように自分の指を何度も交差させてみた。

「熱くないっ!」

瞬間的に火に触るだけでは然程熱くない事に当時の俺は感動し、何度も火をつけては繰り返したのだ。

 

俺は同じ斑の皆に呼びかけて注目を集めると、

「見てろよお前らっ!」

と言い、自分の指をアルコールランプの炎の中に一瞬投じてみせた。

「おお~!」

期待した通りのリアクションに気を良くした俺は、更にもう一回シュッとランプの上を掠めた。つもりだった…。

「ごろんっっっ…」

炎に触れたつもりの俺の指は、意に反してアルコールランプそのものに触れてしまい、机の上は一瞬にして火の海に…。

辺りは絶叫に包まれた。無理もない、見た事もない大きな火柱が上がっているのである。しかし、悪夢はそれだけではなかった。あろう事か俺の隣に座っていた女の子のセーターに引火したのだ。

「なんでセーターなんか着てんだよっ!」

と思うより早く、消火器を持った先生が駆け寄ってきて鎮火してくれた。

 

この後俺は母親を呼ばれ放課後までこっぴどく叱られて、家に帰れば鬼の形相の親父が木刀を片手に待っていた。ひとしきり泣かされてセーターを燃やしてしまった女の子の家に謝りに行ってこの騒動は収まったのだが、実はこの出来事は「魔の一週間」の序章にすぎないのだった…。

 

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